中国台頭の引力は、世界の想像力をとらえた。現在広がっている国際金融危機は、中国がグローバルなシステムでその悪影響を食い止める役割を担えることを再調整するよう世界のリーダーたちに求めている。10年前、つまり1997年のアジア金融危機の直後、中国またはアジアが世界的な安定性を維持するような重要な役割を持つことができたという可能性は、想像も及ばなかった。金融危機の嵐によって世界システムを固定させるアンカーが動揺されることになり、ほとんどの先進諸国を含めていくつかの新興市場も大破した。アジア諸国、とくに北京にとってグローバルな成長の新しいエンジンとする機会があり、その後出てくる新しい世界秩序の制度を形成する。中国がもっと経済的・政治的影響力を行使して国際制度を形成し、将来太平洋全域における重力作用のシフトのダイナミックスを決めようとというシナリオに対し、米国はいかに対応するのか。アジアの民主主義諸国は中心的な役割を演じて、米国の地域に対する首尾一貫した戦略の発展を促進するためにこれらの新しい政治的・経済的真実を語る。
グローバルな経済の再連結は、地域における米国の安全保障の利益をもっとリスクにさらし、そして米国が自らの外交目標を実現するためにもっと地域大国に依頼するようになる。米国には地域で強い同盟国(日本、韓国、そして台湾)があるにもかかわらず、米国からの保証と米国の同盟諸国の間で地域安全保障イシューに関する調整の欠如は、米国の対アジア政策をばらばらに壊し、それが間接的に同盟諸国が対米関係を利用して台頭する中国をヘッジングすることを奨励する。米国政府は最終的に新しい安全保障環境に同調するとともに包括的な対アジア戦略を構築して冷戦時代の青写真を取り替える。
北京を既存の国際制度に組み入れさせることは、ワシントンの信用を得ることになり、そうすることが北京を国際規範に対してもっと責任があるようにして、その意思決定をもっと予想できるようにすると思われる。西側は中国に既存のシステムにおけるより多くの利害関係を与えることを通じて、西側によって発展されたゲームの規則を守るよう北京を励ますことができるのである。中国に関与することが重要であるうち、中国をグローバルな制度に組み入れる代わり、北京にその民主主義を犠牲にするような白地小切手を与えることの代価は許されない。
中国における透明度の不足は、統治体制の問題だけでなく、米国の安全保障を脅かす問題でもある。その不足によって、米本土安全保障が攻撃を受けやすくなると同時に中国の政治的、経済的、軍事的台頭をさせるモチベーションと意図をワシントンにとって難しくしているからである。北京の意思決定の不透明さは、米国がこれらのリスクをヘッジングする必要であることを促進し、そして、中国へのエンゲージメントを追い求める米国は、旧い同盟諸国との関係を向上して新しい安全保障環境に立ち向かうべきである。
なぜアジアの民主主義を促進するのか
低下している民主主義の促進を米国外交の中核的な政策目標に掲げることは、ここ数十年間に自由主義のアジア政治の利得を押し返す悪影響をもっている。グローバルな経済不安定の期間には、政治の不確定さは、新興民主国家――彼らの民主制度はまだ確定されていない――が権威主義的な指導者によって差し出された保障に頼る。つまり、政権の安定のために、民主主義的権利と初期の民主的制度は疑問視されるかもしれない。
新しい地域のダイナミックス、すなわち中国の台頭について、民主主義同盟諸国の国内の懸念に対する米国指導者の無作為は、韓国、台湾、そして日本の親米指導者を疎外する副作用を持っている。
こうした誤った政策の結果は、米国のコミットメントに対する同盟諸国の信憑性のギャップが大きくなり、世界中にわたる民主主義への支持を弱める一方、アジア社会での保守的な要素を応援すると誤って解釈されてしまう。したがって、一部の懐疑論者は、米国が自由と民主主義を広げるという彼らの常に口にした目標を捨てるのではないかと首を傾けている。外交政策の主な柱としての米国の政策に対する人気が落ちているといわれ、失敗するに決まっている。このタイプの考えは、現実からより遠く取り除かれることができず、地域に対する包括的な米国の政策を案出するための前提として危険なほどまぎらわしく、そして、より重要なことに、それはアジア地域における米国の長期的な安全保障利益を危うくするものである。世界中にわたる米国の信憑性の浸食は、価値の追求に対してではなく、そのむらのあるアプリケーションである。米国がその長期目標から目先の短期利益の実現、たとえば「友好の独裁者」あるいは権威主義の指導者への支持に移る場合、その信憑性のギャップはさらに広くなる。
米国が中国の平和的台頭と地域の発展を促進する最善の方法は、北京政権の民主化を促進することであろう。現在、北京指導者さえ中国での民主主義を改善することの必要性に、リップサービスをしなければならない。これは政府の責任への期待を増加するではあるが、民主主義による中国人の手段は、西側ないし世界での定義とはかけ離れている。中国で民主主義の出現を形づくるのを助ける影響への強いコミットメントだけは、米国のリーダーシップの信憑性を取り戻して、地域および世界中の至る所で民主主義同盟諸国の信頼を回復することができる。今日、民主主義の促進はかつてのように歓迎されていないかもしれないが、しかし、民主主義がヒットを取ったならば、それは決して米国の一極主義によるものではなく、民主化のプロセスでどれほどの困難な道のりでありうるかを、現実的に予想しなかったという失敗によるものであろう。
民主主義の促進は非民主主義政権を封じ込める戦略として誤解されている――冷戦期間中、これは戦略目的として使われたかもしれない。鉄のカーテンを押し戻した民主主義諸国の上昇とベルリン壁の崩壊は、S・ハンティントンによって第三波の民主化として描かれた。共産党統治が高まった後、第三波の民主化は現れて、エリート主導の政治自由化のトップダウン・プロセスを超え、その民主化はアジアから東ヨーロッパまでこれらの各自の市民社会から来た能動的な勢いを必要とした。アジアでの民主主義の促進を再び元気にするアジェンダは、同盟諸国の利得を固める関与政策に取って代わるべきであり、それは米前政権によって無視されたものである。米国の同盟諸国との関係を強化することによって、それも間接的に米国の対中関与政策の影響力を提供するわけである。
中国の台頭を疑うことができる人は少ない。しかし、仮に米国がその権威主義的な発展モデルを模範として地域と世界中の至る所の国に見せるならば、それは各地の独裁政権の勝利であることを意味する。そういうわけで、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東またはアフリカでの民主化を推進しようとする米国のアプローチが各国の異なる事情と一致しなければならないことは、重要である。
米国が民主主義の変化を中国に押し付けることができず、なぜならば、それは逆効果をもたらすばかりであるからである。しかし、米国は外部の条件を作ることができ、それによって民主的プロセスを促進して変化をもたらす。輸送とコミュニケーションにおいて科学的で技術的進歩によって伝統的なバリアが取り除かれる場合、地域の民主主義同盟諸国は、より率先的な役割を果たして地域の民主主義を強化するとともに協力して中国のいたるところに広がる民主主義の配当を固めることに乗り出す。
北京政権の開放と自由化を促進することは、総合的な外交政策目標になるべきである。しかし、中国が一人の米国大統領の任期中に民主的になるという非現実的な期待は、固定されることができない。したがって、米国は地域での民主主義同盟諸国、たとえば台湾に対して適切で首尾一貫した政策を必要とする。
次期米政権の「一つの中国」と台湾
台湾はアジア地域における米国の利益を守る戦略的なかなめである。1979年に制定された「台湾関係法」(TRA)は、台湾との関係を規定するアンカーであり、それによって過去三十年間にわたる地域の安定が維持されている。中国軍(PLA)が台湾海峡の対岸で配備される短距離弾道ミサイルの数(現在1400枚と推定される)を増やしているうちに、米国が台湾への武器売却を続けることは、台湾政府が進行中の両岸交渉でどんな解決方法であっても、恐怖に強制されるのではなく強い立場から交渉することができるということを保証する。米国によって供与され、台湾が購入する特定の項目には議論の余地があるものの、台湾の防衛能力を確実のものにすることは、向上された抑止の価値と強化された防衛の有効性を両方ともに持っていることが明白である。それは台湾の防衛と台湾海峡におけるデリケートな軍事的バランスに不可欠なものである。抑止の価値は重要である。それは軍事的オプションを追求する北京の費用対効果の計算に影響を与えるからである。戦争が可能であるかもしれないと思うことは決して楽しいことではないけれども、それは現実であり、そして、米国は当然のことにこうしたシナリオをできる限り避けようとする。しかし、それをすることは、決意が依然として明確でないうちに、米国が現状維持のパワーとされた状況を作った。「台湾関係法」と「六項目の保証」に秘められた根底にある原則への強い米国のコミットメントは、地域での戦略的バランスを再調整するために必要である。
米国大統領の候補、マケイン(John McCain)上院議員とオバマ(Barack Obama)上院議員は、二人ともいわゆる「一つの中国」政策を支持するといったが、どの候補もその政策をいかに実行するかについて、明らかにされていない。実際に米国が自らの「一つの中国」政策を持っていないので、歴代政権の政策決定者は、それぞれの考えでその問題に取り組んでいこう。そういうわけで、政府当局者は常にそれがそうであるよりそれがそうではないと簡単に関係者に伝える(中国は一つであるが、形式上台湾も一つであるから)。直接に言うと、米国の立場は、ただ「中国は一つで、台湾はその中国の一部である」という中華人民共和国(PRC)の立場を「認知」(acknowledges)するにすぎないが、これまで一度もPRCの声明を受け入れることがない。長年にわたって、「一つの中国」政策に対する米国の政治家と当局者の分かりにくい釈明は、その本来の根拠より多くの信用を与え、思わず「台湾関係法」の行使を縮小して、米国がこの紛争で現状維持のパワーになることを作り上げた。したがって、一括武器売却の可決が重要だという理由は、それが「台湾関係法」の効力を行使して空想の「一つの中国」政策をけん制するだけではなく、米国が依然としてこの三角関係で積極的な参加者であることを示すことにある。
それにもかかわらず、マケインとオバマは、そろって最近批准された64億米ドルの台湾向け武器売却に支持を表明したが、二人の間に目立つ違いがある。その中、マケインは常に台湾向けの強力な武器売却を支持し、そして、中国空軍(PLAF)に対する非対称の優勢を維持して、このますます中国傾いている戦略的なチェス盤で平衡を回復するために、よりハイテク武器、特に台湾が要請したF-16型戦闘機の販売を推進している。それに対し、オバマは、その一括武器売却を支持すると表明したにとどめた。批准された一括武器売却は、当初交渉テーブルの上にあがった項目より少ないことを指摘するのは、重要である。
民主主義の促進とアジアの民主主義諸国
民主主義促進の企業はより多くの株主を必要とし、それは本当にリストラが必要である長期投資であるが、しかし、そのリストラはそれを時代遅れにするのではなく、もっと強くさせるべきである。中国にこの規則に対する例外を作ることは、ただ米国のレトリックと行動の間に現れた断層線――ロシアのジョージア侵略に対する米国の反応で示されたこと――を悪化させただけである。中国は人類の約5分の1を有し、世界で最も成長の速い経済がある国である。中国人にもっと自由を与えることは、世界をもっと安全にし、そしてその安全も米国に拡大することを意味している。それは、アジアの民主主義諸国が次の米政権とともに地域の繁栄のためにもっと投資する必要があるという責任である。
蕭良其(L.C. Russell Hsiao)はジェームズタウン財団の「チャイナ・ブリーフ」(China Brief)の副編集長を務めている。この論文は著者の個人の意見だけである。